本「すてきなあなたに2」から
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・バスのなか
午後、そのバスは、すいていました。
お客は思い思いのところに坐っていて、
まだところどころ空席がありました。
停留所にとまり、四十才くらいの女の人が一人
乗ってきました。
バスにはあんまり乗りなれないような、
そんな雰囲気の人です。
運転席の横の、料金箱の前に立って
ハンドバックを開き、財布の中から
千円札をとり出しました。
でも、このバスでは千円札は使えません。
「どなたか、千円札をくずしていただけないでしょうか」
と、そのひとはみんなに声をかけました。
そのとき乗客全部、それこそ後の座席の人たちまでも、
いっせいに財布を出して、中をしらべはじめたのです。
ほんとうに全部の人が、そうしました。
そして、入口に一番近いひとがお金をくずして
あげました。
みんなニコニコしながら、お財布をしまいました。
人間ってすてきだな・・・、私は急にやさしい気持ちに
なりました。
しかし、私だけが、この光景にみとれていて、
お財布をあけることをしなかったのです。
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私も車で走っていて、救急車が近づいてきた時に
一斉にどの車も道路脇に寄る光景を見て
いつもジーン・・・としてしまいます。
交通ルールだから当然と言ってしまえば
それまでですが、それだけでは、そこまで
素早く徹底できないような気がするのです。
みんなが「少しでも早く行ってほしい」って
思っている気がして、いつも温かい気持ちになります。
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